2012年03月30日

ミロトはなにを語っていたのか。

山奥大学の桜並木が、入学式を待ち構えています。
今日も引きこもってインドネシア研究をしている今村です。

今回は、浅学ではあってもインドネシアの文化研究に足を突っ込んでいる人間は、どんな視点からTo Belongを見ていたのか、書いてみようと思います。

ダンスの研究についてはど素人なので、そこはご了承ください。


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ワーク・イン・プログレス最終日、アフター・トークでミロトが語ったコメントが、この2週間、ずっと私の頭のなかをぐるんぐるんと回っていた。


「観客のみなさんは作品を見て自分なりに解釈しようとしますね。それが面白い。作り手の意図とはちがうことを見つけだしてくれます。それが私たちの表現をより豊かにしてくれるのです」


作り手の意図と受け手の解釈がずれてしまうという、いわば当たり前のことを、なぜミロトはあの場で再確認したのだろうか。なにか重要なことが隠れているのではないか、と思えて仕方がなかった。


ところが、今日になって突然、一筋の光明が差した。
ミロトがなぜ、些細なことに言及したのか。
これを説明できそうな仮説が立った。


以下に仮説を示してみる。

【仮説1】あのときミロトは、勝手な解釈の入る余地がない物語を思い浮かべながら、To Belongをふりかえっていたと思われる。

【仮説2】その物語とは、ジャワ舞踊や影絵芝居ワヤンといったインドネシアのジャワを中心とした芸術表現に多大な影響を与えたインドの二大古代叙事詩「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」のことだと考えられる。なぜなら、ミロトのダンスの土台には、ジャワ舞踊とプンチャック・シラットがあるからだ。

・影絵芝居ワヤン(※1)の観客は、「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」の物語を楽しむのではなく、その人形をあやつる影絵師(ダラン dalang)の語りや音楽指揮、進行の技術を鑑賞する。そのため、観客は当然のごとく物語を共有している(歌舞伎や古典落語のようなものか)。また、どの表現がなにに当たるかを知っていることが、観客の教養の高さを示す指標にもなる。


【仮説3】ミロトの表現力の土台には、ある特定の物語やキャラクターを前提にした動きがある。その表現にはすでに喜怒哀楽の感情やモチーフになった人間、動植物などがセットになっている。表現とモチーフのセットについて掘り下げると、大体は宇宙的な存在により、そのセットの一つひとつが決定されている、という話しになっていく。そうした表現には人の解釈が入りこむ余地はない。

・ジャワ研究者のあいだでは、ジャワ人の宇宙観は宇宙と現世が直接的なつながりを持っている、というのがなかば定説になっている。



【仮の結論】⇒ミロトのなかにあるジャワ人の宇宙観が、この記事の冒頭の一言にふと顔を出したのではないだろうか。



既存のミロト作品を見たことがないので細かいことはわからないが、To Belongでのミロトの動きの意図をそのまま理解するためには、インドネシアの文脈を理解しておく必要があるのかもしれない。


観客のなかでも、インドネシアに関わりのある方々は、ミロトの動きと北村の動きのちがいを敏感に感じ取ったうえで、ミロトの動きのどこがどうインドネシアっぽいのか把握していたのは確かである。

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日本でも年数回、ジャワ舞踊やワヤンの公演があるようです。
ミロトの見ている風景にちかづくためことができるかもしれません。


下記URLからイベント情報をチェックできます。
http://gadogado.exblog.jp/14910208/


※1 そもそもワヤンとは、影絵芝居のことでも人形のことでもない。ワヤンは「影」を意味する単語だが、光に投射される「影」を指すわけでもない。人間の心に宿る葛藤、喜怒哀楽のひだに宿る影を指す。
posted by imann at 11:49| インドネシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月27日

北村明子のオープンクラス

ワーク・イン・プログレスから一週間。
今回は東京都港区にあるスタジオ、アーキタンツで毎週金曜日に行われている北村明子のオープンクラスについて投稿します。

先日3月23日のクラスには、はるばる関西から大学院で舞踏を学んでいるという学生さんがいらしていました。
大学で、ワークショップで、様々なジャンルのダンスクラスを経験しているというという彼女ですが、初めて受けた北村のクラスを「とても斬新!!」と感じたそうです。

クラスでは毎回、呼吸法から、動きと呼吸を連動させる運動や、身体の重さや機能を感じる、利用することで、脳から体への指示系統を増やしていくような運動が行われ、その中には武術の稽古で用いられるような練習も登場します。

そのことについて彼女は「バレエやジャズダンス等、他のダンスの要素が取り入れられたコンテンポラリークラスはこれまで受けたことがあるけれど、呼吸法など武術的な要素を練習に取り入れているクラスは珍しい」と話してくださいました。
また「偏見なく教えてくれるのでとても教わりやすかった」とも話してくださって、先日のインタビューで北村の魅力について「閉じていない」と話してくれた石川慶の言葉が思い出されます。
それはこのクラスに通い始めてもうすぐ1年になる私も常々感じていることです。ダンス初心者でヘナヘナの私にも、それを一つの身体と見なしてアドバイスをしてくれ、指導が入ります。何かを決めつけるような言い方をしないよう心を配っていることが教わる側にも伝わってき、そのような身体との向き合い方、考え方も、直接的な言葉はありませんが教わっているように感じています。こうした北村の姿勢は、今回のTo Belongの制作にも貫かれているに違いありません。

アーキタンツでのこのクラスはアジアツアーのためしばらくお休みとなり、5月から再開される予定です。
再開後、またこのクラスの模様もレポートしていきます。
ARCHITANZ < http://www.a-tanz.com/index.html >
posted by asuka tsukiji at 00:01| ちょっとひと息 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月19日

ワーク・イン・プログレス無事終了


3月15日(木)〜3月18日(日)の4日間、森下スタジオにて開催いたしましたワーク・イン・プログレスの発表が、無事終了いたしました。

北村明子ならびに出演者・アーティスト、スタッフ一同、心より御礼申し上げます。


連日、たくさんの皆さまがご来場くださいました。お席に限りのある会場でしたので、お立ち見いただいたお客さまもいらっしゃいます。トークを含め長時間にわたりご覧いただき、本当にありがとうございました。


最終日には、パフォーマンスの後、出演者・アーティスト全員でのトークを行いました。

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1月初めよりリハーサルを開始、以来このブログで稽古の様子をレポートしてきました。2月20日にミロトが加わってからは1カ月足らず、まだまだ創作途中での発表となりました。4月からのアジアツアー、また9月のシアタートラムでの公演に向け、どのように作品を育て創り上げていくのか、見守っていただければ幸いです。また、今回ご来場いただけなかった皆さまも、9月に完成した作品をぜひご覧いただきたいと思います。

これからもこちらのブログで、インドネシア関係の話題なども織り交ぜながら、今後の創作の様子をご報告していく予定です。どうぞお楽しみに!

posted by office A/LB at 13:19| お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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