2013年01月28日

サウンドディレクター 森永泰弘さん02

ガムランは打楽器のアンサンブル。
コロトミーのリズム構造は、
無限を暗示する観念性を提示する。

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インドネシアと言えばガムラン音楽、をイメージするのですが、どんな音楽なのですか?

森永:ガムランは、インドネシアの伝統音楽として有名ですね。これは金属製の旋律打楽器中心のアンサンブルです。地域としては、ジャワとバリの各地にそれぞれ特有の形態があります。アンサンブルそのものの演奏だけでなく、舞踊やワヤンと呼ばれる影絵芝居の伴奏を担当する音楽としても発展しました。

ガムランという言葉は、どういう意味があるのでしょうか。

森永:ガムランはインドネシアやマレーシアなど、その周辺の島で発展したものです。このガムランgamelanという言葉は、「ガムルgamel」すなわち「たたく」から派生した語で、「たたいて鳴らす楽器」または「たたいて鳴らす楽器による音楽・演奏」を意味しています。

ガムランの音楽自体にはどんな特徴がありますか。

森永:一番の特徴は、楽器の編成において色々な種類の旋律打楽器を数多く使用する点です。旋律打楽器とは、木琴や鉄琴のように一定の音階に基づいて調律された打楽器であり、ガムラン楽器においてはその振動部分の素材に青銅や竹、木などが用いられているのです。

複数の旋律打楽器によって、重層的な音が生まれているのですね。ところで、ガムランはゴージャスというか貴族的な雰囲気を感じるのですが、どのように発展したのでしょうか。

森永:インドネシアには昔から大小の王国が存在していました。13世紀末からジャワのマジャパイト王朝が栄え、インドネシアにおけるガムラン音楽はそこの王朝における宮廷文化として形成され、発展したものが多いとされています。ただしガムランと一口に言っても、インドネシアの様々な地域で異なる目的でガムランが演奏されているため、一概にその発展の経過を説明することはできないと思います。

ガムランで演奏される音楽にはどんな特徴があるのでしょうか。

森永:ガムラン音楽の特徴は、使用される楽器それぞれにメロディー、リズム上の役割分担があることです。これはガムランの楽曲構造の特徴そのものを反映しています。メロディー担当の楽器群には、基本旋律を演奏する楽器と、基本旋律をさまざまな形で装飾して演奏する楽器とがあります。

どのような構造になっているのか、教えてください。

森永:基本旋律は、四拍単位で「バルンガン」とよばれ、メタロフォン類(中音域のサロン、スレンテムなど)の楽器が演奏します。一方、バルンガンを装飾した旋律を演奏するのはゴングチャイム(ボナン)やメタロフォン(高音域のサロン)、木琴(ガンバン)などで基本旋律を細かいリズムに分割して変奏したり、基本旋律の骨格の音のみを演奏したりしています。これらは音域別にいくつも重なって演奏されているので、メロディー部分は厚い層を形成するようになるのです。

かなり複雑なきまりがあるのですね。

森永:リズム担当の楽器群は、一定の拍数を一周期として、そのなかを細かいリズムで区切り、それをくりかえす細かいリズムで区切り、それをくりかえす役割をもつ。このリズムの区切りはすべて、ゴング類で演奏されます。ガムラン音楽は、複数の打楽器がそれぞれ一定の間隔で拍の区切りをつけ、それをくりかえすリズム構造を持っているのです。ヤープ・クンストはこのような周期で繰り返されるリズム構造を「コロトミー」と呼びました。ゴングによるコロトミーのリズム構造は常に時間を反復することができ、無限を暗示する観念性を提示していると言えます。このコロトミーのリズム構造で絶え間なく続く音響は「通奏持続音」ないし「ドローン」と呼ばれる音の効果をうむことになるのです。

ガムラン音楽を理解していく上で、どこから手をつけていけばよいのでしょうか。

森永:ガムラン音楽のリズムを構成する上で、インドネシアの各地域のガムラン音楽がどのような編成で演奏されているかを決定することは困難だと思います。しかしながら、ジャワ州の中部ソロで演奏されているガムラン音楽は、宮廷用音楽として今日のガムラン音楽の基礎を担う編成となっています。他にはジャワ西のスンダ、バリ島などを挙げることができます。私は、ジャワ州の中部のソロ宮廷ガムラン、ジャワの西部のスンダ地方の小編成ガムラン、バリ島のガムランを例にしてガムラン音楽の編成と特徴を考察していきたいと思います。


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2013年01月25日

サウンドディレクター 森永泰弘さん01

森永さんとインドネシア音楽への旅をしよう。

To Belongの舞台は、ダンスだけでなくサウンドの部分でもすごくインパクトがありました。
言葉と音楽と、環境音というか、自然の音や町の音が、何か不思議な空間を生み出していて、その中にぐいぐい引き込まれていきました。To Belongで音楽のディレクションを担当した森永さんは、世界そして地球の音および音楽について研究されています。
森永さんをガイドに、インドネシア音楽への旅をしてみたいと思います。

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これからインドネシアの音楽を知るために、いろいろ教えてください。
まず始めに、インドネシアの民族音楽について伺いたいと思います。

森永:民族音楽という定義は曖昧なものです。
民族音楽という言葉は1960年代にアメリカのロバート・ブラウンという音楽学者によって名付けられ今日に至っている背景があります。
でも、ヨーロッパを中心とした音楽だけを「音楽」と呼び、それ意外の音楽を「民族音楽」と呼ぶのはいいことなのだろうか、という疑問が生まれます。

それは西洋音楽至上主義ということへのアンチテーゼですね。

森永:そういう意味だけではなく、地球上で誕生している全ての音楽を「民族」と言ってもいいのだろうか、と思うのです。確かに音楽の歴史は長く、世界中で異なる音楽がこれまで誕生し発展しています。
でも、ブラウンの言うワールドミュージックの和訳として使われた民族音楽の定義は広すぎるし曖昧だと思っています。

今、私たちがざっくりと民族音楽と思っているものは、どのように生まれたものなのでしょうか。

森永:民族音楽と言われる分野以前は「比較音楽」という名が使われていたようです。
民族音楽は西洋音楽の様式を他国のそれと比較してゆくといったもので、国や地域またはコミュニティー間の共通した価値観や宗教観によって生まれた音楽です。
それは自然や現象への念、精霊信仰(アミニズム)、祖先崇拝、などの生命を超えた概念と関連したものなのです。

現代社会においては、宗教がそれに変わる存在になっていて、言葉が重要視され、音楽の部分はあまり重要でなくなってるのではないですか?

森永:確かに、仏教、イスラム、キリスト教などの宗教が国教として信仰されている国は多くあります。しかし、東南アジア独特の土着の信仰が共存している状況はしばしば見られると思います。それは今でも儀礼のなかに顕著に見られるもので、決して失われたものではないと思います。
たとえば、霊の世界との交信を目的とするような儀礼や魔術には音楽や踊りが深くかかわっています。あるいは無文字文化の口承伝承や場所や環境が引き起こす響きに音楽性を担うことも多々あるわけです。それよりも政府の管轄が行き届いていない地域や政治的な問題や民族間の紛争や貧困等から、少数民族達の音楽や口承伝承が段々と失われてきていることが問題なのです。

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2013年01月21日

アートイベント Float,on いよいよ創作熱ピーク。

寒い寒い松本。センター試験も無事終了して、受験生たちは一段落。
松本は、まだまだ固まった雪が道路のそこここにあってとても危険!
大荷物で道々歩く時はスローテンポです・・・。

そんな中、来月2月7日のアートイベントFloat,onへの準備が徐々にスピードアップしてきました。
このイベントは、To Belong projectで生まれ出た要素をばらばらに解体して、新たなアーティストの参加と、信州大学のゼミ学生との共同作業によって、その一部を発展していこう、という試みです。

ここで、私の大学の先生としての顔を少しご紹介・・・。

私は、信州大学人文学部 芸術コミュニケーション講座 でダンスの実技・講義の授業を担当していています。年に一度、アーティストを迎えて学生主催のアートイベント実施しています。
舞台経験があるなしにかかわらず、芸術に興味をもつ学生たちと、ダンスや音楽、映像の本格創作をアーティスト招聘することで目の当たりにしながら、それを受けて、創作アイデアをひねりだしたり、制作・広報を担当したり、いろんなことを知り、学び、楽しむゼミです。受講生はとっても大変なんですけどね・・・。

このチラシも学生が思考錯誤してデザインしたもの。デザインを担当した学生も無事卒論を提出したので、内心ほっとしている今日この頃です。
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さて、1月9日には招聘アーティストの音楽家 横山裕章と 映像作家 山田咲 が来松。12月に相談してきた内容をいっきに学生にぶつけました。

横山裕章との出会いはTo Belongの下敷きとなった神奈川県立近代美術館の「HITO展」(2011年1月)。マルチナス・ミロトと私の屋外パフォーマンスイベントでライブをしてもらったのがきっかけでした。

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音楽家 横山裕章 official website: http://yokoyamahiroaki.lovesick.jp/

身体中がむずむずと踊りたくなる彼の音楽に惚れみ、このあと、イギリスでの作品や神奈川県民ギャラリーでの「ジョン・ケージ生誕100年 せめぎ合う時間と空間 日常/ワケあり Art Complex 2011」
(2011年10月、http://www.nichijo-wakeari.info/ja/art_complex/)でもセッションをしてもらったり、To Belong プロジェクトにも楽曲提供をしてもらっている、とても頼りにしているアーティストです。

今回は、To Belongサウンドディレクションを担当している森永泰弘と新ユニットを結成。意気投合した二人の異なるサウンドのミックスがとても楽しみなのです。

映像作家 山田咲とは、音楽家 森永泰弘からのリレー紹介。なんと先月出会ったばかりなのに、すっかり意気投合して年末年始ミーティングを重ねて急接近!学生とのコミュニケーションもぐいぐい牽引し、イマジネーション刺激術がすごい!真剣にドラマ創作に向き合う山田のひとつひとつの言葉は誠実で明快。そして幻想的ですっかり魅了されています。

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映像作家 山田咲 

さてダンスはというと・・・

先週は、パフォーマンス担当のゼミ学生が動きを出しあい急展開。森永泰弘、横山裕章の第1稿の音楽からインスピレーションを得て、アイデアを具体的に組み立てていく作業をはじめました。
カラリパヤットやシラット、ジャワ舞踊からヒップホップ、、、ジャンルを問わず、なんでも体験したことのある動きからエッセンスをとりこみ、動きを生み出している時間・・・考え込む時間/動きに集中する時間 この循環から徐々に身体をアクティブにしていきます。

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Float,on
2013 年2月7日(木)
19時〜(上演は約1時間を予定)、アフタートーク予定。
キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)中ホール
入場無料

■イベント詳細は以下で是非ご覧ください。
Float,onブログ http://floaton.blog.fc2.com/

■学生たちがイベント紹介をしながらリサーチ、創作過程を生き生きと更新しています。
信大人文の学生生活をぜひのぞいてください。
信州大学人文学部芸術コミュニケーション講座北村ゼミFacebook
http://www.facebook.com/artcomkws

さて、次回はTo Belongプロジェクトから派生するこのアートイベントとパラレルに進んでいく、リサーチ内容や創作過程についてレポートしていきます。。。
posted by akiko kitamura at 00:12| 稽古場レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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