2013年03月31日

哲学/倫理学 荒谷大輔氏 01

このたび、荒谷大輔さんが、2012年9月の「To Belong」公演に対して、批評を寄せてくださいました。少し時間を置いて彼の分析に接すると、新しい気づきが数多くあります。ぜひ、みなさまにも読んでいただきたく思い、ブログ誌上に掲載させていただきます。批評のテキストを掲載する前に、荒谷さんの人となりをご紹介させていただきます。


荒谷さんは哲学・倫理学をご研究されていらっしゃいますが、 どのような分野をご専門とされていらっしゃるのでしょうか。 また、最近最も関心をもってとりくんでいらっしゃることについて、お聞かせください。

荒谷:まじめに答えると結構面倒くさい理屈をこねることになるので、とりあえずそのまま「哲学/倫理学」と答えるようにしています。あえて分節化すれば、人々の実際の生活に根ざした部分(=倫理)を構造的に考える(=哲学)という感じでしょうか。実際には、フランス現代思想の研究がベースになっているのですが、「フランス現代思想研究」というと色がつき過ぎてしまって、僕がやっていることと全く違うことがイメージされることが多いので、誤解をさけるためにこういっています。最近は、「人々の実際の生活に根ざした部分」ということで、しばらく「経済」について研究していましたが、それについては漸く成果が出ました。

ダンスについては、どのような興味・関心・問題意識をお持ちなのですか?

荒谷:ダンスは学生のころからずっと関心を持っていて、実際に動くことも含めて、研究をしています。ふつう人は、他人と共通した言語的な構造を使って、表現しますが、それだとどうしても言語という一般的なものを必ず媒介にする必要があります。つまり、言葉が意味を持つのは、誰か他の人がそういう意味で使っているのを聴いたことがあるからなのですね。そうすると、言葉は、時間的空間的に一回的なものを表現するのに、向いていないことになります。ダンス、特にコンテンポラリーダンスは、言語的な構造に寄りかからず表現し、しかもそれを他人に伝達することができてしまうもので、それは何なのか、というのが根本的な関心ですね。なので、批評的な関心というよりも、哲学的な関心が強いと思います。

このたび、2012年9月の[「To Belong」公演に対して、批評をご執筆いただき、ありがとうございました。北村さんの仕事はいつごろからご存知なのでしょうか。どのようなきっかけで知り合われたのか、どのような関心をもたれているのか、などについて教えてください。

荒谷:学生のころダンスに興味を持って、自分の身体を動かそうとはじめて参加したワークショップがレニ=バッソ主催のものでした。その後、ひょんなことから自分がワークショップを企画する立場になって、北村さんを「先生」としてお呼びすることをしばらく続けたのです。なので、現実にはあり得ませんが僕がダンサーとしてプロフィールを書くはめになったら、「コンテンポラリーダンスを北村明子に師事」と書く必要があるでしょう(笑)。なんで「師匠」になってもらおうかと思ったかといえば、迷わず北村さんの卓越した身体性を理由に挙げます。上に書いたこととも関係しますが、ダンスは他の芸術と違って、もっともらしい(それこそフランス現代思想に塗り固められたような)理屈づけをして売り出すことができず、ダンサーの身体がそのまま作品(の一部)となります。ダンサーの身体性は、後知恵で「勉強」してもなかなか伸ばしづらいものだと思うのですが、北村さんの身体性は、疑いなく本物だと思っています。

9月の舞台をごらん頂き、どのような印象をもたれましたでしょうか?

荒谷:これについては、書いたもので答える感じになると思いますが、一言でいえば、コンテンポラリーダンスという枠組みにとらわれずに、表現の大元のところに立ち返って新しいものを作ろうとしているな、と感じました。一時期は名実ともに日本の「コンテンポラリーダンス」の看板であったわけですが、そうしたこと自体から抜け出したいのかな、と。

もうすぐご著書である『経済の哲学』が出版されると伺いましたが、どのような内容なのでしょうか? また、ダンスやアートについて考えることと「経済」は何か関わりあう部分というものがあるのでしょうか?

荒谷:恐れ入ります。『「経済」の哲学』は、今の社会において、すっかり支配的な原理として浸透した「経済」の構造を哲学的に問い直すというものです。「経済」というのは、もともと「思想」の言葉で、例えばストア派では宇宙の秩序のことを意味していましたし、キリスト教では今でも、神による救済の計画の実現を「経済(日本語では訳しわけて「経綸」とすることが多いですが同じ言葉です)」と言っています。他にもいろいろな時代でいろいろな用法があるのですが、総じて「経済」という言葉は、いつでも、特定の思想の枠組みにおける「ありうべき秩序」を意味するものとして使われているのです。
 このことは、実は現代の経済学でも全く同じで、経済学ではふつう「経済」とは何かみたいなことは考えの外におくのですが、それは、みんな同じ経済学によって「経済」を考えるということにおいてすでに、特定の「思想」の共有を前提にしているからなのですね。その「思想」とは何かということ、現代の社会に生きている人がふだん全然思想なんか関係なく自由にやっていると思っていながらもすでに刷り込まれてしまっているものの在りかを示すことがテーマになっています。
 ダンスやアートとの関係をいうとすれば、もっともベタにいえば、アートが「経済」に支配される現状をどうするかということでしょうね。ダンスやアートには、既存のシステムの乗り越えて新しいものを指し示す力があると思うし、そうでなければならないと思うのですが、現状は経済原理で動いている。批判したらキリがないですが、アーティストとしての名声を確立するために意図的に経済原理を使う人までいて、「勝ち組」になれれば何でもいいのかよ、と思うこともしばしばです。現代これだけ支配的なシステムにのっかるというのはひとつの手段であるとは思いますが、異なるシステムをまわしていくための希望としてダンスやアートが人々を魅了するような状態を目指すことを忘れてはいけないと思います。

(構成:つちやまきこ)
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2013年03月24日

ダンサーだましい再び・・・

いよいよ、暁 の公演リハーサル、大詰めです。作品の骨格をつかんだ今、前進あるのみ!
学生時代から知るダンス・カンパニー コンドルズのメンバーが別ユニットとして活動している暁。今回お誘いいただいたのも、大学院生時代の先輩石渕聡さんから。夜中に電話がかかってきて日程を聞かれ・・・院生時代の集まりのおしらせかな?と思ったら公演の出演依頼でした。

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飲み会での石渕さん。踊っているときもこんな表情をされるので、ときどき吹き出しながらのリハーサル。

いざ稽古に入ってみると、毎日が楽しく、同じダンスをやっていても、こだわりポイントが全然違う!とても新鮮です。

まず選曲音楽!これがとても大きい。なんというか、身体中に音の粒子がなだれこんでくるような、圧倒的に踊ることを説得されちゃう音楽のオンパレード。音楽好きにはたまらないメドレーにぎゅっとハートをつかまれます。

そして男性陣が披露するダンスは、まさに「ますらお」振り。ダイナミックでコミカルなインパクトをそこここに振りまいていきます。なんだか諏訪の御柱祭の時の取材をしたことを思い出してしまいました。得体のしれないパワーと刹那的な身体・・・。
1ダンサーとして出演ということはめったにないので、そんな環境も楽しんでいます。

去年の3月半月板を怪我してから1年がたちました。To Belongの公演中も、ギブスをしながらの舞台となり、お客様をはじめ、関係者の方々にはとてつもないご迷惑をおかけしてしまいました。

その後も完治までは随分時間がかかりました。いまだに時々きしむ膝ですが、トレーナーの先生のリハビリ指導により、ようやく動くことが怖くなくなりました。
ここまで来るのにとても時間がかかりました。怪我、といっても炎症がおさまればいい、というわけではなく、落ちた筋肉や、狂ってしまった身体のバランスを取り戻すため、PNFリハビリテーション、ほか、針、マッサージ、筋トレ、なんでも試してみました。最後に一番時間がかかったのが、メンタルな部分。自動的に身体感覚が怖がってできなくなってしまった動きを克服することがどんなに大変かを痛感しました。怪我をした瞬間に休めなかったこと、その判断に対する自分のダンスに姿勢など、何度も考え込んだ時期もありました。去年は、なんというか、新しいことと辛いことを一辺にごった煮におこしてしまった年だったなあ、、、と、いろいろ反省しながらの1年でした。そしてダンサーとしてしっかりと復帰できるのか・・・という舞台が今回。たくさんの方にみていただきたいです。

さて、アートイベントFloat, onが終わり、次のTo Belongプロジェクトの発展版のためのリサーチも再開。現在、音楽家 森永泰弘がインドネシアの各地域を旅し、リサーチを続けています。森永とグンドノはなにやら画策中。すごく楽しみです。ヒップホップのミュージシャンやウクレレでクロンチョンを歌う女流歌手との交流など、毎週のようにすばらしい報告を受けてわくわくしているところです。これはまた追ってブログでご紹介していきますね。

さて、そんな中、国際交流基金HP Performing Arts Net work in Japan のインタヴュー記事が公開されました。

「インドネシアと協働する北村明子の新境地」 http://performingarts.jp/J/art_interview/1.html

聞き手は“ヤサぐれ舞踊評論家”こと、乗越たかおさん。
レニ・バッソ時代からTo Belongプロジェクトまでの道のりなど、普段はあまり話さないようなことまで、聞き出し上手の乗越さんによる手腕でめいっぱい引き出されています!

To Belong-dialogue- 公演前にインタビューしていただいた

Cinra.net 「決して安住しないダンスの求道者 北村明子インタビュー」
http://www.cinra.net/interview/2012/09/10/000000.php

の記事と読み比べると、なんだかBefore / Afterを文章化していただいたような気分。
他、同世代や海外のダンスについても触れていますので、読み応えばっちり!
皆様に読んでいただけると嬉しいです!

ところで、3月29日〜31日の本番がおわるまで、サクラは満開かしら・・・
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2013年03月15日

flaot,on イベント無事終了致しました!

気がつくと3月春の季節!また時間があいてしまいました・・・。

アートイベントFloat,on にご来場いただきました皆様、本当にありがとうございました。
一同心より御礼申し上げます。
おかげ様で満員御礼・・・パフォーマンスが少し見づらくなってしまったことお詫びいたします。。。

緊張感にあふれる劇場入りから4日間。アーティスト、ダンサーは松本の寒さに驚きつつも、学生たちをしっかりリード!すばらしい時間を提供してくれました。

今回は、学生の研究発表の展示会、兼パフォーマンスイベント。ドアオープンと同時に観客の皆さんが目にするのは、通路上やスペース内に並んでいる譜面台。その上には、リサーチ過程で触れてきた本や、写真、キーワードや楽器、お面、その他さまざまなものが展示されています。そして、目玉は学生らが創作した「虹蛇」にまつわる物語が書きだされたテクストノート。
映像作家山田咲が学生らから引き出した、創造力豊かな日常/非日常のお話しがつづられていました。
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それらは本編スタートと共にはじまる映像作品のテクストで、山田が映像に捉える学生たちの話しぶりは、ちょっと神秘的ですらあったかもしれません。
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音楽は森永泰弘と横山裕章の合作。森永の自然音がインドネシアの土地や神話的な世界への「移行」を誘えば、横山の音楽は鑑賞者の感情を揺さぶり、ここからあちらへ、という「移行」実現させる動物の運動感のようなグルーヴをダンサー、観客に与えていきます。横山は「音創りをするときには音像が見える」なんてアフタートークでいってましたが、まさにそれを疑似体験した気分・・・。

学生の最終ダンス指導も担当した西山友貴は、華麗なソロダンスを披露!私とのマンツーマンの稽古中も、基本的な動きの振付後、細かい修正を重ね、確実にその課題とイメージを自分のものにしていく強さをもったダンサーだなあ、と感服しました。

何かのエネルギーに突き動かされるように、まさに憑かれたように踊る身体が、ふとした瞬間に倒れていく姿は、こんなに美しいのか、、、と改めて思ってしまいました。
それに刺激をうけた学生のダンスも、リハーサルとは大違い!なかなかの腕前をみせてくれました。

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その身体運動が紡ぐドラマとパラレルに、映像も言葉と運動を投げかけていきます。
山田咲が創作した学生の等身大のお話しは、知らず知らずのうちに違う誰かに「移行」しやがて、兼古昭彦の映像が幻覚のように現れ、鋭く身体を突き動かしていくエネルギー源になっていきます。

音楽が耳を刺激し、身体を運動へと導くことがあるのであれば、映像の光は皮膚を浸透し、踊り手、鑑賞者をもイメージと運動の世界へと誘ってくれます。

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アフタートークでは、バリのワヤン・クリのダラン(影絵師)のドキュメンタリー映像をご提供くださった
村尾静二先生も参加。「まさにバリの儀礼のようなパフォーマンスイベントだった!」というお言葉に、思わず学生らも浮かれてしまいました。

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主人公でもあるダラン(影絵師)の、川で水浴びをし、農夫として働き、おじいちゃんとして孫に伝統文化を伝え、食事をし、くつろぎ、ワヤンの仕事をする、という一日が、山田咲の編集により、学生の日常と非日常の物語の世界に溶け込んでいきます。彼の様々な顔を持つ豊かさは、私たちの現代社会ではなかなか持ちにくいものだ、と思えました。ゆったりと、選択肢ある豊かな生活を送るバリの老人。彼がねっころがって、少年のような眼をしてテレビをみながら、やがていびきをかいて寝てしまうシーンで、なんだかほんわりと幸せな気分になるのは、私だけでしょうか。。。

さて、このイベントを終えて、今度は私自身が踊る版です。
暁 というグループの作品に出演します。
男性がとても多いグループで、なかなか自分からはでてこない振付を覚えたり、彼らに振付を渡したり、といつもと異なる環境を楽しんでいます。

こちらも是非!

暁〜AKATZKI〜  作戦行動〇〇参 
「サクラの森の満開の下でキスして」 〜デッカード編×レイチェル編〜
■日時:
三月二十九日(金)午後七時半開演:Aプロ 
三月三十日(土)午後二時半開演:Aプロ/午後七時半開演:Bプロ
三月三十一日(日)午後三時半開演:Bプロ

Aプロ:デッカード編
Bプロ:レイチェル編
受付:開演一時間前 開場:開演三十分前
■劇場:シアタートラム(最寄駅:三軒茶屋駅)
   東京都世田谷区太子堂四ノ一ノ一 〇三-五四三二-一五二六
■料金:(全席指定・ 税込)
  一般:三千五百円
  大学生:二千五百円
高校生以下:千五百円
当日券:上記金額プラス五百円
学生券は当日、学生証の提示が必要です

暁春ノ超特別キャッシュバックキャンペーン決行!
AプロBプロ通シ券:六千円(一般ノミ限定発売)


そして、To Belongプロジェクト参加中のリアントの公演情報もございます!

ジャワ舞踊の夕べ“Wulan Ndadari”第一弾 in新宿サムラート
〇日時:3月23日(土)
一部7:30-8:00pm
二部8:30-9:00pm

〇場所:新宿インド料理レストランサムラート
住所:新宿区新宿3-18-4セノビル7F(バーニーズニューヨーク右隣のビル)
03-3355-1771 www.samrat.co.jp

〇料金:ショーチャージ1000円(一部二部ともご覧頂けます)他、お食事代

〇演目と出演者
一部:Lenggeran Gunungsari バニュマス地方のダイナミックな舞踊
    /山本有香、舟山あゆ美
Golek Sulungdayung 宮廷舞踊の流れを汲む優雅な舞/川島未耒
二部:Oleg Tambulilingan ミツバチの求愛を表現したデュエット(バリ舞踊)
    /松重貢一郎、安谷絵里
Bromastara 勇壮な戦士の舞/リアント

〇ご予約・お問合わせ:09044532555(川島) mirayanli@softbank.ne.jp
※ご予約頂きました順に良いお席をご用意させていただきます。
posted by office A/LB at 11:22| お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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