2013年04月09日

森永泰弘氏 インドネシア滞在日記 (3/3)


インドネシアのカセットテープカルチャー

 そしてインドネシアでは恒例の中古レコード屋巡り。60-70年代のガンバン・クロモンというクロンチョンに中国楽器が入ったレコードやスマトラ島の民謡、そして60-70年代のスンダのジェイポンのカセットテープを買い漁る。インドネシアの60-70年代初期の音楽は色々な音楽要素が混ざっており辺境グルーブで流行しているロックやガレージとは違う独特な音楽様式がある。

 これを支えているのがカセットテープ文化である。中古レコード屋のお兄ちゃんによれば、60-70年代初頭のインドネシアのカセットテープは低音域が現代の音質に比べて良質で、レコード以上にダイナミック・レンジのノリが良いと言っていた。またこの頃のカセットテープはA面とB面で異なるバンドが演奏している。というのもカセットのA面はメインのバンド、B面では新人バンドで構成されており、片面テープ30分でメインバンドの音楽は十分に収録することができたからである。

 また、インドネシアにおける60-70年代のカセットテープにはジャンル名がタイトルとなるケースが多い。例を挙げれば、スンダ地方のポピュラーミュージックはSunda POPやムラーユ音楽であれば、POP Mulayu。ジャンル名がタイトルとなることで、購入する側はすぐにその音楽がどのジャンルかがわかるようにする心理作戦である。つまり購入者はわざわざそのテープを聴かずともどんな音楽なのかがわかるので時間がかからない。当時は視聴するというのは稀で、比較的安価なカセットテープは国民にとってコンビニエンスストアでタバコを買うのと同じ消費のされ方だったのだろう。

 一方、LPは当初から高額でその装置もなかなか手に入らない品物であったようである。1971年以降、インドネシアでのテープの生産数は莫大に伸び、この頃誕生した音楽(例: スンダのジェイポン)はレコードよりもカセットの生産数の方が断然多いようである。

 このインドネシアのカセットテープカルチャーで重要なのが、テープの留め具である。こちらのレコード屋のお兄ちゃん達はテープの巻き戻しに手動のおもちゃのような機械でテープの巻き戻し/早送りを行う。テープデッキの巻き戻し機能を使ってしまうと磁気テープが切れてしまうからだ。60-70年代のカセットテープは一タイトルの生産数がひじょうに多かったようでプラスチックの部分が比較的壊れやすい。特に留め具の部分は、デッキの停止ボタンを突然押すと強いプレッシャーで切れてしまう。レコード屋のお兄ちゃん達は60-70年代初頭のテープを店頭に置くとき、この留め具の部分のみ現代のカセットの留め具と取り替えて販売しているのだ。
この証言がどこまで正しいかは謎であるが、インドネシアのカセットテープカルチャーをもう少し掘り下げて考えるときっと面白い発見があるのでは、と思った話だった。

lokananta record collection.jpg


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