2012年05月17日

音楽レポート2(インドネシアの楽器編)

ジャカルタ公演の様子が写真で公開されましたが(5月10日のブログ)、同公演において、音楽の方にも新しい展開がありました。

ワーク・イン・プログレスの後、音楽ディレクターの森永さんは、インドネシア入りして「フィールド・レコーディング」を行い、また、現地の多様な音楽にも出会われたようです。その詳細は、また後日、森永さんにインタビューをしてご報告します。

さて今回は、制作過程の中で、興味深い楽器として紹介してもらったインドネシアの楽器「アンクルンangklung」を取り上げてみようと思います

(写真1)インドネシアのレストランにあったというアンクルン

アンクルン3.JPG


アンクルンは、ユネスコ無形文化遺産にも登録された、長い歴史をもつ民族楽器です。インドネシアの音楽というと、青銅楽器の厳かな音色を思い浮かべる方も多いと思いますが、この楽器は「竹」で作られています。上写真の1音分を側面から見てみると、独自な構造が見て取れます。

(図1)1音分の構造

アンクルン(構造2).png


このように、2本の竹が並べられ、その音間は1オクターブになるように調整されています。周りの竹枠を握り振ることで、2本の竹が揺れ、オクターブを同時に鳴らすことが出来るのです。音が出る仕組みはというと、竹の下部にある「つめ」が、底辺となっている竹の溝の中で動き、それとぶつかり合うようになっています。その振動を拾い上げ膨らませるのが、竹の下方半分の「共鳴筒」の部分です。

「カランカラン」「カランコロン」と鳴る響きは、安定した音高と竹特有の打音が重なり、不思議な清涼感が漂います。音色はというと、日本の「ししおどし」を思い起こさせはするものの、連打となると雰囲気は一変、賑やかさが加わり、懐かしくも新鮮な味わいです。

写真のアンクルンに戻ると、太枠に支えられて、低音から高音まで順に8音分が並べられています。演奏する時には、手前の竹枠を握り、前後に揺すって音を出し、1音ごとに持ち替えながらメロディーを奏でるようです。また、このように複数の音を1セットとして組み合わせることなく、複数の演奏者が1つずつ手に持ち、1人が1音を担当する形でアンサンブルが出来るのも、この楽器の大きな魅力の1つ。その時には、(図1)の向きで竹枠を両側から握り、横向きに振って鳴らすことになります。この、ハンドベルのようにアンサンブルする様子は、映像で観てみて、ほがらかな気持ちになりました。

さらに、演奏法が大別して2つあるというだけではなく、アンクルンの形状自体が、地域によって大きく異なっていることも興味深いところです。例えば、ジャワ島西部においては上記のように「振る」形をしていますが、バリ島の方はというと、竹筒を木琴のように並べてマレット(ばち)で打ち鳴らすタイプのアンクルンもあるようです。それぞれの土地で、現在はどういった演奏がなされているのでしょうか、聴いてみたくなります。

今回は、珍しい楽器ということでアンクルンをご紹介させてもらいました。しかしながらこの楽器、「楽器を手作りしてみよう」といった類の本にはしばしば登場する、遠くて近い楽器でもあるのです。調律する際には、竹の太さによって削り具合を変える必要があるようで、難しそうではありますが、その微細な変化を感じてみたいところ。竹の素材を意識しつつ耳を澄ましたら、愛着がわきそうです。
(以上)


参考文献
黒沢隆朝:『図解 世界楽器大辞典』(1972) 雄山閣
柴田南雄:『楽器への招待』(1983) 新潮文庫

posted by naoko saiki at 01:33| インドネシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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